1982年より1988年までに当科入院中に死亡した糖尿病患者74名を非糖尿病患者334名と比較しその直接死因を検討した。糖尿病患者はすべてインスリソ非依存型糖尿病でその直接死因は, 悪性新生物35.1%, 虚血性心疾患17.6%, 感染症12.2%, 脳梗塞と糖尿病性腎症がそれぞれ9.5%であった。虚血性心疾患および脳梗塞は, 非糖尿病患者の約2倍の頻度であった。腎不全は約6倍の頻度であった。死亡年令別にみると, 61才以上では虚血性心疾患と腎症の増加が認められたが, 60才以下では脳梗塞の比率が高かった。糖尿病罹病期間の長い群に, 虚血性心疾患と脳血管障害の増加が認められた。過去の集計と比較すると, 直接死困では悪性新生物と虚血性心疾患の比率が上昇しており, 逆に糖尿病性腎症と糖尿病性昏睡の低下が目立った。以上より糖尿病患者治療上, 癌検診もぜひ必要と考えられた。また, 虚血性心疾患や脳梗塞の動脈梗化性疾患の予防のさらなる進歩が必要と考えられた。