日本農村医学会雑誌
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四万十川における肺吸虫症の実態
宮原 伸二
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1991 年 40 巻 1 号 p. 42-46

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抄録

高知県西土佐村内の四万十川, およびその支流の流域における肺吸虫症の実態を明らかにすることを目的にモクズカニとサワカニへのメタセルカリアの寄生と人への感染調査を行なったので報告する。
Aカニの調査
モクズカニは四万十川の2か所から59匹を捕獲し, 2匹 (3.4%) にメタセルカリアの寄生を認めた。
サワカニは四万十川の支流6か所から178匹を捕獲し, 105匹 (59.0%) にメタセルカリアの寄生を認めた。
人への感染調査
西土佐村民2,274人に対して, 1次から5次調査まで順次対象者をしぼり込みながら感染調査を行なった。
1次調査は肺吸虫病に関するアンケート調査, 2次は皮内反応検査, 3次は胸部レソトゲン検査, 4次は喀痰検査, 5次は血清検査を行なった。
この結果, 1人にウェステルマン肺吸虫 (二倍体型) を認めた。
この調査により四万十川, およびその流域では肺吸虫は実在の疾患であることを明確にすることができた。また, モクズカニ, サワカニやイノシシの生食は危険であることを村民に啓蒙するための具体例を示すことができた。

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