日本農村医学会雑誌
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外科からみた農村の胃癌
真田 勝弘岡本 浩平柴田 光一平沼 進登内 真
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1992 年 41 巻 2 号 p. 103-109

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抄録

農村地帯における胃癌の治療成績の現状の一端を示すものとして, 茨城県県南地方の土浦市とその周辺の地域を診療圏とする土浦協同病院外科での胃癌症例の検討を行なった。
対象は1978年1月から1989年12月までの12年間の初回治療の胃癌入院症例1,409例である。男女比は2: 1, 年齢層では60歳代が最も多く, 50歳代, 70歳代がほとんど同数でこれに次いでいた。1,409例の95.8%に当たる1,351例で手術を施行した。切除例は1,164例で切除率は全体として86.1%であり, 治癒切除例は951例で治癒切除率は70.4%であった。
年次的にみると, 切除率も治癒切除率も次第に向上してきたが, その要因としては, 病期の進んでいない早期の症例の増加が主体であり, 切除範囲, 合併切除, リンパ節郭清など手術内容の関与するところは小さかった。
術後の5年生存率は, 全切除例の60.3%, 治癒切除例の72.0%であったが, 長期生存率も年次的な改善が明らかであった。この原因も治癒可能な早期症例の増加によるもので, 集団あるいは個人的検診, 無症状期での受診が寄与していた。
今後の課題としては, 高齢者胃癌の増加が予測されるので, その治療成績を高めるために高齢者の検診受診率を高める必要がある。

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