日本農村医学会雑誌
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甲状腺超音波検査632症例の検討
石川 雅枝橋本 洋前田 淳重本 六男山下 克子横山 泉
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1997 年 45 巻 5 号 p. 639-646

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抄録

著者は甲状腺疾患発見のため, 頸部の超音波検査時だけでなく腹部や乳腺などの超音波検査の際にも甲状腺を観察するよう努めている。甲状腺超音波検査を行なった632例について検討した。(1) 甲状腺超音波検査所見は結節性病変157例 (そのうち充実性腫瘤は52例), びまん性変化38例, 異常なし437例であった。(2) 結節性病変群には7例の甲状腺癌が含まれた。7例の年齢は41歳から92歳, 腫瘍径は8mmから28mm, 組織型は乳頭癌6例, 濾胞癌1例であった。腫瘍径25mm以上の3例では診察時に前頸部腫瘤を認めたが, 20mm以下の4例は腹部超音波検査の際に甲状腺を観察して発見したものであった。結節性病変に甲状腺機能異常を伴ったのは機能亢進2例と機能低下3例であった。(3) びまん性変化群には機能亢進5例 (亜急性甲状腺炎1例, バセドウ病4例), 機能低下2例 (慢性甲状腺炎) が含まれていた。そのうちバセドウ病の1例と機能低下2例では超音波検査前には甲状腺疾患を指摘されていなかった。甲状腺機能正常の31例の中にも10例の甲状腺自己抗体陽性例がみられた。(4) 超音波検査がきっかけとなって甲状腺機能異常が診断されたのは機能異常12例中5例で, この5例のうち4例が60歳以上の老年者であった。
超音波検査は甲状腺癌だけでなく, 甲状腺機能異常の発見にも有用であった。甲状腺疾患は頻度が高く, 腹部などの超音波検査時に甲状腺の観察を追加することが有意義であった。

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