日本農村医学会雑誌
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在宅管理でTRH (ヒルトニン) が有効であった脳血管性パーキンソニズムの一例
小林 一久柏木 愛子井出沢 剛直金井 隆高山 一郎北原 史章依田 芳起塩澤 全司
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1997 年 46 巻 2 号 p. 178-183

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抄録

患者は77歳, 男性, 約7年前 (平成元年頃) から頭重感や言葉を出しづらい等の自覚症状が出現し, 色々な病院を受診していた。平成元年に当センターで撮影した頭部CTでは, 脳室の拡大と皮質の萎縮が目立ち, 左の放線冠部に小さな低吸収域が見られた。平成2年3月に脳出血発作があり, 左後頭葉の皮質下に出血巣が見られ, 約1か月後吸収された。その後しだいに言語障害, 歩行障害等が増悪し, 固縮, 手指の振戦, 嚥下障害等も出現してきた。平成6年から在宅での訪問管理を開始した。症状から脳血管性パーキンソニズムを考え, 当初L-ドーパの投与を試みたが効果はなかった。次いで視床下部を中心とした血管運動中枢になんらかの影響を与えるというThyrotropin Releasing Hormone (TRH, ヒルトニン) を投与してみたところ, 無気力や発声困難嚥下障害に効果があった。投与法は点滴静注または筋注で行ったが, 在宅では筋注の方が実施し易く, 1回0.5mgを10日~14日筋注して投与期間と同じ日数休むサイクルで行い, これにより死亡までの約1年間ほぼ良好に管理することが出来た。

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