日本農村医学会雑誌
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農村における中高年女性の健康実態把握と健康増進対策に関する研究
山根 洋右
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1998 年 47 巻 4 号 p. 645-657

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抄録

1997年から2年間にわたり, 日本を縦断する調査研究チームを編成し, 永年, 各研究者が健康づくり支援活動を続けている都市近郊農村, 農山村, 農漁村を対象に, 農山村の中高年女性の健康実態把握と健康増進対策に関する調査研究を行った。
1. 多様化する農村の実態とコミュニティ特性を明らかにするため, コミュニティプロフィールに関する調査票を作成した。対象とする農山村町村の特性をこれにより把握し, 変貌する農村コミュニティの実態把握と問題の分析に有効であることを明らかにした。
2.「農村中高年女性ヘルスチェック調査票」を作成した。また, 地域特性別, 年齢階層別の「中高年女性コミュニティヘルスケア・マネージメントシート」を作成し, 農村女性の健康増進計画策定に有効であることを明らかにした。
3. 農村地域における中高年女性の全国縦断的健康実態調査を行った。特に「更年期障害」を中心に, ライフスタイルとの関連を分析し, 更年期障害は, 血管運動神経障害タイプが5%, 睡眠障害, 神経症, 知覚障害のタイプが各1%みられた。これらの障害は, 月経周期, すなわち血清エストロゲン濃度よりも, 生活役割における社会心理的因子により影響されている可能性を明らかにした。この詳細は別項にて報告した。
4. 各分担研究者により, 共同調査と平行して個別テーマを設定し, 調査研究を行った。個別研究テーマは, 北海道「農村中高年女性の頭部CT健診と痴呆予防対策」「中高年女性農業従事者と酪農従事者の健康実態と対策」, 秋田「農村中高年女性の経年的脂質動態と脂質上昇に関する経年的解析」, 千葉「農村中高年女性の健康と生活習慣」, 長野「農村中高年女性の生活と健康実態, 特に健康度判定と社会的文化的要因」, 島根「農村中高年女性の健康実態とヘルスプロモーション」, 熊本「農村健康長寿者の実態と中高年女性の健康増進対策, 特に住民参加型健康増進活動」である。これらの多角的調査により, 農村中高年女性の健康問題の多様性と健康増進対策の在り方を明らかにした。

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