日本農村医学会雑誌
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急性心筋梗塞における臨床的背景および臨床像
男女差についての検討
藤原 秀臣田中 千博後藤 昌計合屋 雅彦雨宮 浩家坂 義人
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1999 年 47 巻 6 号 p. 857-863

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抄録

冠危険因子には食事などの生活習慣因子や環境因子などに起因する後天的可変因子と年齢や性, 遺伝的素因などの先天的固定因子がある。一般に急性心筋梗塞の発症にはこれら冠危険因子や社会環境因子が複雑に関与していることから, その臨床的背景, 臨床像は男女間で異なるとされている。そこで, 急性心筋梗塞を発症して当院に収容され, 緊急冠動脈造影を施行し得た連続500例 (男性390例, 女性110例) の患者背景, 冠動脈造影所見, 臨床像, 臨床経過等について男女間で比較検討した。心筋梗塞の発症は男性が60歳代にピークがあるのに比し, 女性では70歳代がピークであった。冠危険因子では, 喫煙は男性に多かったが高血圧, 高脂血症, 糖尿病ともに女性に多かった。冠動脈造影所見は病変枝数, 病変部位に差はなく, 緊急PTCA頻度にも差はなかった。臨床経過では, 心破裂が女性に多く, 特に高齢女性の予後は男性に比し不良であった。女性の心筋梗塞は閉経期以後に急増するが, これは脂質代謝と関連するエストロゲンが関与していると考えられている。高齢女性の予後が悪いのは, 高齢のために冠危険因子を複数有し, 臓器合併症が多いこと, 病院到着時間が長いことなどと関連していることが示唆された。高齢女性の急性心筋梗塞の診療にあたっては, これら臨床的背景に充分留意すべきであると考えられた。

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