日本農村医学会雑誌
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診断に苦慮した子宮カルチノイド腫瘍の肺転移の一剖検例
戸島 敏安田 洋新井 正伊東 祐二早川 和良高屋 忠丈土井 百恵渋谷 智顕伊藤 俊哉樫木 良友吉見 直己
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1999 年 48 巻 1 号 p. 48-53

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抄録

今回我々は, 転移性が疑われた肺腫瘍の診断をきっかけに, 子宮頸癌 (腺扁平上皮癌) にカルチノイド腫瘍が混在していたと考えられた一剖検例を経験した。その細胞像および組織像について検討したので報告する。症例は43歳の女性。不正出血が持続したために来院, 子宮頸部細胞診が施行された。細胞像は, 扁平上皮癌細胞と腺癌細胞が混在してみられた。子宮頸部の生検においても同様の所見を認め腺扁平上皮癌と診断された。広汎子宮全摘および所属リンパ節郭清術が施行され, 化学療法を行い定期的に経過観察されていたが, 術後約4年3か月経過時の胸部レントゲン写真において異常陰影を指摘され, 精査目的にて気管支鏡が施行された。気管支鏡検査時に採取されたポリープの病理組織像および電子顕微鏡所見より, 肺カルチノイドと診断された。同時に作製した捺印による細胞診像においてもカルチノイド腫瘍を強く疑う所見が得られた。このためretorospectiveに初診時の子宮頸部の細胞診像および病理組織像を検討したが腺癌および扁平上皮癌の所見を認めるのみでカルチノイド腫瘍を疑う所見は得られなかった。しかし, 神経内分泌マーカーであるNSE, chromogranine Aの免疫組織染色を施行した結果, 子宮頸部組織の腺癌様の一部分に陽性所見が認められたことより, 子宮頸部癌は腺扁平上皮癌に神経内分泌性の性状を有する腫瘍が混在していたものと考えられた。このことから組織診, 細胞診上, 低分化の腺癌および扁平上皮癌を疑う場合は, 子宮頸部のカルチノイドを含めた神経内分泌腫瘍も鑑別診断の一つとして考慮すべきであり, 免疫組織染色, 電子顕微鏡的検索を加えて確定診断することが重要であると考えられた。

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