日本農村医学会雑誌
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血清脂質 (T-C, HDL-C, TG, LDL-C) の加齢変動と高齢者用基準範囲設定の試み
江角 幸夫安達 久美子高橋 こずえ深田 靖彦陶山 昭彦
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2000 年 49 巻 1 号 p. 12-20

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抄録

アメリカ臨床検査標準委員会 (以下NCCLS: National Committee for Clinical Laboratory Standards) 指針案による血清脂質4項目 (T-C, HDL-C, TG, LDL-C) の高齢者 (65歳以上) 用基準範囲の設定を試みた. 島根県内で実施した健康診断受診者14,738人を対象に, 受診時点で何らかの治療を受けている, 食後12時間未満, 毎日飲酒する, 喫煙する, 収縮期血圧160mmHg以上または拡張期血圧95mmHg以上, 肥満度-20%以下または+20%以上の除外基準を設定し, 基準標本群を抽出した.
基準標本について性別に, 血清脂質4項目の平均値の加齢による変化を調べたところ, T-Cでは男性で50歳代, 女性で60歳代をピークにゆるやかな山型を示した. HDL-Cでは大きな変動は見られなかったが, 女性が男性に比べ高値であり, 女性では60歳代になると50歳代に比べ有意に低値を示した. TGでは男性が女性に比べ高値であった. LDL-CではT-Cと同様な傾向を示した.
成人群 (64歳以下) と高齢者群 (65歳以上) について平均値の差を調べたところ, T-C, TG, LDL-Cでは高齢者群が成人群に比べ有意に高値を示し (p<0.01), HDL-Cでは高齢者群が成人群に比べ有意に低値を示した (p<0.01). この結果をもとに, T-Cで147-289mg/dl, HDL-Cで37-99mg/dl, TGで40-209mg/dl, LDL-Cで70-200mg/dlと高齢者用基準範囲を設定した.

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