抄録
片麻痺の筋萎縮に廃用が関与しているか否かを検討する目的で筋生検を行い酵素組織化学的所見を定性的に比較検討した.対象はH群:片麻痺12症例(麻痺側外側広筋9標本,長母趾屈筋4標本)とBJ群:骨・関節障害11症例(外側広筋11標本)である.H群とBJ群の外側広筋の定性的筋所見に相違はなく,筋線維タイプと筋線維の直径にはタイプ1線維≧タイプ2線維≧タイプ2B線維の関係が認められた.H群の長母趾屈筋には,筋萎縮とタイプ2線維の部分的肥大を認めた.H群では日常生活の活動性と筋萎縮に関連はうかがえるものの,活動性が高くても筋萎縮が高度な症例があった.BJ群では活動性の高い症例には筋萎縮はほとんど認めないか,またはごく軽度であった.これらの結果より,片麻痺の筋萎縮は治療可能な廃用の要素と治療困難と予想される中枢性要素が混在していることが示唆された.