外傷性の上腕切断4例と腕神経叢引き抜き損傷(全型)1例で,皮膚刺激(温痛覚,触覚,温度覚)による幻肢の変化を調査した.切断の1例では,消失していた幻肢の出現が認められた.幻肢の残っていた切断と腕神経損傷各1例では,障害と同側の顔面への皮膚刺激で幻肢の増強が認められ,断端や障害と同側の上胸部への皮膚刺激でも幻肢の増強が認められた.切断例では,皮膚刺激の方向まで認識できた.皮膚刺激により幻肢が認識された理由としては,大脳皮質の一次体性感覚野上では手や上肢の領域と顔面の領域が隣接していることより,上肢の損傷により隣接する健常な顔面の領域が侵入し,大脳皮質の再構築が生じた可能性が考えられた.