リハビリテーション医学
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インテリジェント義足装着者の歩行能力
健常者と比較して
陳 隆明澤村 誠志藤田 久夫中川 昭夫中島 咲哉
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2000 年 37 巻 12 号 p. 934-939

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抄録

本研究の目的は,インテリジェント義足装着者に対し,インテリジェント義足の機能を引き出すために当センターで考案した訓練プログラムを実施し,彼らの歩行能力を歩行時エネルギー消費と歩行速度の観点から健常者と比較検討することによりインテリジェント義足の性能を明らかにすることである.被験者は片側大腿切断者10名(男性7名,女性3名)で,年齢は28.1±11.3歳,体重は56.0±9kgである.被験者は平坦な道を分速30,50,70,90,110m/minでそれぞれ5分間の歩行を行った.歩行中の酸素摂取量の測定は,テレメトリー式呼吸代謝計測装置k-4(Cosmed社製)を用いて,breath-by-breathで行った.インテリジェント義足訓練群において酸素コストの最低値は歩行速度70m/minあたりであり,健常者と一致した.歩行速度30m/minではインテリジェント義足訓練群は健常者と比べてエネルギー消費量は平均で31.8%大きかった.同様に50m/minでは平均で31.4%,70m/minでは平均で22.2%,90m/minでは平均で25%大きかった.インテリジェント義足訓練群は110m/minの歩行速度での歩行が可能であり,その歩行速度におけるエネルギー消費量は健常者と比べて平均16%大きかった.本研究結果ではインテリジェント義足訓練群の快適歩行速度は健常者とほぼ一致し,健常者の通常の歩行速度と考えられる70,90m/minにおけるエネルギー消費の増大は従来の報告に比べれば極めて低かった.快適歩行速度,エネルギー消費の観点から見た場合,インテリジェント義足訓練群は従来の切断者に比べ歩行能力は明らかに優れていた.以上のことより,インテリジェント義足の性能は従来の義足に比べて極めて優れていることが実証された.

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© 社団法人 日本リハビリテーション医学会
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