2022 年 1 巻 2 号 p. 260-273
日本社会の高齢化に伴い,腎疾患を有する高齢者も急増している。高齢の腎疾患患者はサルコ ペニアなどの合併頻度が特に高く,QOL の低下,死亡率増加のリスク,医療費増大の要因にも なる。そのため,サルコペニアに対する予防・治療が重要性を増しているが,治療介入や有効な 予防策のエビデンスも不十分である。腎疾患におけるサルコペニアの発症・進展機序を理解し, エビデンスに基づいた予防・治療法の構築が必要である。本稿では,腎疾患におけるサルコペニ アとその問題点をまとめ,骨格筋のエネルギー代謝から筋たんぱく質の分解経路,筋たんぱく質 の合成系についての基礎を概説する。さらに,腎機能の低下により体内に蓄積する尿毒素に着目 し,その尿毒素が及ぼす筋細胞内代謝とサルコペニアの発症・進展とのかかわりについて紹介 し,今後の治療への展開について展望を述べる。