2022 年 1 巻 2 号 p. 274-278
症例は視神経脊髄炎を発症した末期腎不全の82 歳男性。下肢脱力,下肢感覚低下が生じ前 医でステロイドパルス療法を受け回復したが歩行困難などがまだ続くためX−28 日当院の回 復期リハビリ病棟に転院した。転院時,ステロイド15 mg/ 日 経口と神経因性膀胱に対するベ タネコール投与開始および尿管カテーテル留置が継続された。転院当初より便秘がちであっ たが,強度の便秘に続いてX 日突然に全身発汗と悪寒が生じ体温は36 . 5℃と平熱で血圧も 137 / 89 mmHg とバイタルに異常はなかった。続いて脈拍も40 / 分代の徐脈がみられるように なった。これらの症状から,コリン作動性クリーゼを疑うもコリンエステラーゼ阻害薬の投与は なかった。そこで,ベタネコールによる発作と考え,中止したところ症状はすぐに正常に回復し た。コリンエステラーゼ活性は低値のままで同剤中止による変動はなかった。便秘が契機となり ベタネコールによるコリン作動性クリーゼが起こったものと考えられた。