日本胸部疾患学会雑誌
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膵癌の縦隔転移により, 上大静脈症候群と非腫瘍性ADH分泌調節異常症を合併した1例
山口 哲生長尾 啓一山田 研一鈴木 俊英河野 俊彦水谷 文雄吉田 尚渡辺 昌平
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1985 年 23 巻 2 号 p. 237-244

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抄録

56歳男性の, 上大静脈症候群 (SVCS) とADH分泌異常症 (SIADH) とを合併した1例を報告した. SVCSの原因は, 膵癌の縦隔リンパ節転移によるものであった. この症例の, Diphenylhydantoin 静注後の水負荷試験では, 水利尿不全状態の若干の改善を得た. また, Diphenylhydantoin を経口投与することで, 低Na血症の改善をみた. 立位試験で, 著明な低血圧がおこるにも拘らず, 頻脈はおこらず, 血中ADH値は上昇せず, baroreceptor からの反射に異常のあることが示唆された. 剖検にて, 両側迷走神経に腫瘍の浸潤のあることがたしかめられ, また, 腫瘍中ADH活性は認められなかった. SVCSにSIADHが合併しやすいとの記載は散見されるが, その成立機序は, 腫瘍が迷走神経まで浸潤した場合に, 正常の baroreceptor からの反射が障害されて, 生理的なADHの分泌調節に異常がおこるためと思われる.

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