抄録
慢性閉塞性肺疾患における呼吸筋の形態変化を検討する目的で, エラスターゼ誘起性肺気腫モルモットの横隔膜に関して組織化学的手法により形態計測を行った. 肺気腫群において, 体重と横隔膜重量の変化はみられなかったが, ヘマトクリットの上昇傾向が認められた. またエラスターゼ注入24週後には, 横隔膜筋線維の分布に関してFG線維の減少とSO線維の増加が認められ, glycolytic fiber より oxidative fiber への transformation が示唆された. さらに肺気腫群においてSO線維とFOG線維の断面積の増加が認められ, 毛細血管密度についても増加傾向が認められた. 以上の成績より, 肺気腫群においては横隔膜筋線維の酸化能力は増大し, したがって疲労抵抗性を増大せしめる方向に形態変化が生じている可能性が示唆され, 負荷の増大に対する組織レベルにおける代償性変化の1つと考えられた.