日本胸部疾患学会雑誌
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成人に見られた肺の Congenital Cystic Adenomatoid Malformation の2例
佐川 宏明海老原 善郎桑原 利章佐々木 忠柳沢 正弘城所 達史
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キーワード: 成人肺, 肺嚢胞, CCAM
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1985 年 23 巻 5 号 p. 593-598

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抄録
成人に見られた Congenital Cystic Adenomatoid Malformation の2例を報告する. 症例1は23歳の女性で, 11歳の時に右の気胸様変化を指摘されたが, 症状なく放置した. 1980年8月に突然の呼吸困難にて東邦大学医学部付属大森病院に入院した. 胸部レ線で右上肺野に巨大嚢胞性病変が認められ, 右下葉単純切除術が施行された. 嚢胞は単房性で厚い壁を有し, 内壁面はビロード状であった. 組織学的に嚢胞壁には気管支構造の管状・乳頭状増殖が見られ, それらは線毛円柱上皮或いは腸管上皮に似た杯細胞で被われていた. 間質には上皮下に弾力線維, 平滑筋が目立った. 気管支腺, 軟骨はどこにも存在しなかった.析細胞はPAS-アルシアン青染色同様ムチカルミン染色でも陽性を示した. 症例2は44歳の女性で, 健康診断で右下葉に異常陰影を指摘された. 河北総合病院に入院となり右下葉切除術が施行された. 腫瘍は3.5×5.5×5.5cmの大きさでS8に認められた. 腫瘍は黄色で硬く1cmまでの嚢胞が多数見られた. 組織学的に腫瘍は気管支様構造よりなり, それらは腸上皮に似た粘液細胞の介在する線毛円柱上皮によって被われていた. 上皮下の間質では基底膜, 平滑筋, 弾力線維が目立ったが気管支腺や軟骨は大きな気管にも認められなかった. 小円形細胞浸潤が散在性に見られた. 粘液細胞は症例1同様の染色態度を示した. これら2例の組織所見は日本の成人では極めて稀だが, 肺の Congenital Cystic Adenomatoid Malformation のものとほぼ一致している. その発生機序, 自然史, 鑑別診断について若干の考察をした.
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