日本胸部疾患学会雑誌
Online ISSN : 1883-471X
Print ISSN : 0301-1542
ISSN-L : 0301-1542
反復性, 非吸収性肺炎の1剖検例
松島 敏春安達 倫文副島 林造日浦 研哉
著者情報
ジャーナル フリー

1985 年 23 巻 5 号 p. 605-610

詳細
抄録

過去10年間に4回の肺炎を反復した81歳, 男子の症例の, 臨床的特徴と剖検所見を報告した. 4回の肺炎において, 肺炎病巣中に連輪状陰影が認められたが, 剖検所見では病巣中に拡張した気管支, 細気管支, 肺胞ならびに嚢胞を認めた. 連輪状陰影の発現機序は, 硬化巣中にこれらの含気空間が存在することと, 炎症反応が弱く滲出液が乏しいためであると考えられた. 4回のうち3回の肺炎で陰影の吸収は遅く, 不完全であった. 非吸収性肺炎の機序を本剖検例から明らかにすることはできなかったが, 幾つかの機序について考察した. 更に本症例の場合, 肺炎を繰返し, 肺炎陰影が残存する毎に, 漸次肺活量の低下をきたした. このことは, 不完全吸収性肺炎の臨床上の大きな問題点を提起しており, 今後検討すべき点であろうと思われる.

著者関連情報
© 日本呼吸器学会
前の記事 次の記事
feedback
Top