日本胸部疾患学会雑誌
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下大静脈欠損症の1例
大崎 能伸羽根田 俊清水 哲雄山下 裕久飛世 克之小野寺 壮吉
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1985 年 23 巻 6 号 p. 709-714

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抄録
43歳の女性が定期健康診断で, 胸部X線写真上の異常を指摘されて, 精密検査のため当科を紹介された. とくに自覚症状はなく, 既往歴, 生下時にも問題はなかった. 理学的所見では, 脈拍数が50/分と徐脈の傾向を示したほかには異常はなかった. 心電図上, ときに洞停止と補充収縮がみられ, 洞機能不全が疑われたが, P波の形は正常であった. 胸部X線写真上, 左肺野の塊状陰影のほか, 奇静脈弓が横径で2.0cmと拡大していた. 心胸郭比は44%で心陰影の形状は正常であった. 側面写真では, 心陰影の後方に血管性の成分がみられた. 血管造影法により, 下大静脈から奇静脈を介して右房に至る血管の異常走行がみられ, これは側面ではいわゆる“candy cane”像を呈した. 以上より他に合併奇形をともなわない奇静脈代行型下大静脈欠損症と診断した. 本症の成因, 診断上の問題点につき検討した.
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© 日本呼吸器学会
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