抄録
ヒト糖尿病肺では結合織成分の増加から肺胞壁肥厚が起こることが知られている. 同様な形態変化はラットの実験的糖尿病肺においても観察されている. 本実験はかかる糖尿病由来の変化が豚膵エラスターゼの反復投与により改善し得るか否かを, 光顕的 Morphometry および剔出肺の静肺圧一量曲線の変化から評価しようとしたものである. 糖尿病ラットでは身体発育の遅延がみられるが, エラスターゼ投与により改善された. また, Morphometry では肺胞径拡大, 平均肺胞容積の増加, 肺胞壁肥厚の改善がみとめられた. 圧一量曲線では中肺気量位でエラスターゼ投与群の弾性収縮圧の軽度の低下をみた. エラスターゼ投与にも拘わらず, 肺胞壁破壊が生ずることはなかった. 以上よりエラスターゼ反復投与が, 実験的糖尿病における身体発育過程および肺の病変を改善させることが示唆された.