抄録
18歳男性で, 開胸肺生検により, IVBATと診断された症例を経験した. IVBATは, 本症例を含めて, これまでに世界で43例しか報告されておらず, 本邦では, 6例を数えるのみである. 性別の明らかな症例では, 男性7例, 女性34例と, 圧倒的に女性に多い. 通常, 発見時,臨床症状をほとんど伴っておらず, 偶然胸部X線写真で, 多発性の小結節状陰影として発見される事が多い. 予後は, 非常に緩慢な経過をとるが, 最終的には, 呼吸不全を生じ, 死亡することが多い. この腫瘍の発生母細胞としては, 第VIII因子や Weibel Palade body の証明等により, 血管内皮細胞説が, 最も有力である. また, 病理所見像は, 肝の malignant epithelioid hemangioendothelioma の肺転移像とほとんど差異がなく, この2種の疾患の相異性が問題になってきている.