抄録
臨床上, 右心負荷を認めない慢性閉塞性肺疾患 (COPD) 患者11名に, 右心カテーテル実施下に運動負荷試験を行い, 運動時の肺循環動態とガス交換におよぼす酸素吸入およびニトログリセリン (NTG) の影響について検討した. これらの患者では, 運動時心拍出量 (CO) の増加に対し, 肺血管抵抗 (PVR) は低下せず, 平均肺動脈圧 (PPA), 右室一回拍出仕事係数 (RVSWI) は著明に上昇した. また, 30%O2吸入およびNTG投与により, 安静時のPPA, RVSWIは低下し, さらに運動時におけるこれらの上昇は抑制され, この機序として, O2吸入およびNTG投与のいずれの場合も, COおよびPVRの低下によるものと考えられた. 一方, これらO2吸入やNTG投与により, 動脈血および混合静脈血酸素分圧や, oxygen transport (CaO2×CI) の組織酸素化の指標は, 安静時, 運動時共に悪化を認めなかった. 以上より, O2やNTGの投与は, COPD患者の慢性肺性心への進展予防に有用であるとみなされた.