日本胸部疾患学会雑誌
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術前診断の困難であった限局性胸膜中皮腫の1症例-MRIによる検討を加えて-
稲田 俊雄多田 慎也高橋 清平木 俊吉中田 安成大熨 泰亮木村 郁郎清水 信義
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1988 年 26 巻 8 号 p. 893-897

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抄録
70歳. 男性. 人間ドックにて胸部異常影を指摘され受診, 胸部X線写真にて左肺門前縦隔に腫瘤状陰影を認めた. CT scan にても脂肪層にかこまれた陰影が前縦隔にみられ, MRIにても肺実質との連続性, 心血管系との連続性を認めなかったが, T1強調画像にて腫瘤は脂肪成分をほとんど含有せず, T2強調画像にて骨格筋と皮下脂肪の中間の intensity を呈した事より low grade malignancy と考えられた. 以上より, 本例は縦隔腫瘍, なかでも胸腺腫と診断された. 手術所見では, 腫瘤はS3臓側胸膜より発生し有茎性の腫瘤であり, 組織学的検討により良性限局性胸膜中皮腫であった. 限局性胸膜中皮腫は特徴的な臨床症状に乏しく, レントゲン学的所見も特異的なものは少ないとされている. 今回, 我々は従来報告されている胸部X線写真, CT scan による所見に加え, 核磁気共鳴現象によるMRIを用いた所見を検討し得たので報告する.
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