日本胸部疾患学会雑誌
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気管支擦過検体の肺癌術前組織診断への応用 -肺癌診断における鉗子生検との比較検討-
山川 久美馬場 雅行柴 光年卜部 憲和藤沢 武彦山口 豊大岩 孝司
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1989 年 27 巻 1 号 p. 64-70

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抄録

気管支鏡下のブラシ擦過により得られた塊状検体をパラフィン包埋して組織切片を作製し, 肺癌35例を対象に術前診断法としての意義を鉗子生検 (TBFB) と比較検討した. ブラシ塊状検体は組織構築を良好に保っており約80%は病理組織学的検索に耐え得るものであった. 正診率はブラシ組織診, TBFBともに46%であったが, いずれかの組織診から組織型を正診された症例は23例となり, 組織診全体の正診率は66%と向上した. 9例ではTBFBよりもブラシ組織診の方が診断に有用であった. 組織型別, 気管支鏡所見別の検討でも両者の陽性率に明らかな差は認められなかった. 小細胞癌ではTBFBの標本が高度に挫滅されているのに反してブラシ組織診の標本は挫滅が少なく診断が容易であった. TBFB陰性例の検討からいうとTBFBには検体採取部位が適切でなく, また挫滅が高度な症例のある欠点があることから, ブラシ組織診の併用により組織診陽性率の向上を期待しうると考える.

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