日本胸部疾患学会雑誌
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過敏性肺炎およびサルコイドーシスにおけるBALFリンパ球増加の機序に関する研究-BALFリンパ球の運動能について-
大塚 盛男吉澤 靖之内藤 隆志高橋 伸禎村山 淳一井上 亨矢野 平一佐藤 哲夫長谷川 鎮雄
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1989 年 27 巻 12 号 p. 1483-1490

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抄録
過敏性肺炎 (HP) およびサルコイドーシス (サ症) における気管支肺胞洗浄液 (BALF) 中のリンパ球増多の機序を検討するため, BALFリンパ球の運動能を測定し, 末梢血リンパ球と比較した. リンパ球の運動能の測定は chemotaxis chamber を用いて行い, 膜内の一定の距離以上に遊走した細胞数および最も深く遊走した細胞3個の遊走距離を算定した. その結果, BALFリンパ球の遊走細胞数はHP753.3±86.5, サ症334.2±41.0, 遊走距離はHP50.2±3.8μm, サ症57.9±4.6μmで, それぞれ末梢血リンパ球に比べ有意な高値を示し, PHA活性化りンパ球のそれと同等であった. また, BALFリンパ球の運動能とBALF細胞中のリンパ球の比率あるいは活性化Tリンパ球であるIa+Tリンパ球の比率とは有意な相関を示した. 以上より, BALFリンパ球の運動能は末梢血リンパ球に比べ亢進し, 活性化リンパ球の増加によるためであることが明らかとなり, BALFリンパ球増多の機序の一つとして, 間質病変から運動性の高いリンパ球が肺胞腔内に移行する可能性が推測された.
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