抄録
原発性肺癌患者の癌性胸水におけるシアル化 Lewisx (S-Lex) とCA19-9として知られているシアル化 Lewisa (S-Lea) を検討した. これらの糖鎖抗原の癌性胸水における陽性頻度は, S-Lexが49.1%, CA19-9が40.0%で, S-Lexが高く, またCA19-9が陽性を示した例は殆どがS-Lexも陽性であった. このことから, 肺癌の癌性胸水における腫瘍マーカーとしては, S-LexがCA19-9より有用であると考えられた. 胸水中のS-LexとCA19-9が異常高値を示した1症例の胸水を sephacry S-1000でゲル濾過し, S-LexもCA19-9も分子量200万以上の高分子に共通して存在することを示唆する成績を得た. それゆえ, 2つの糖鎖抗原に対するモノクローナル抗体を用いて, doubledeterminant assay を行ったところ, 2つの糖鎖抗原の活性のパターンはほぼ一致した. 以上のことから, S-LexとCA19-9は胸水中では共通の高分子蛋白を carrier として存在することが強く示唆された.