抄録
ラット気管上皮擦過モデルを作製し, 損傷後の上皮再生, 特に基底部を中心にその修復過程の経時的変化を電顕的, 免疫組織化学的に検索した. 上皮再生は損傷部辺縁の残存上皮の扁平化に続く細胞移動による損傷部被覆に始まり, 被覆再生上皮では早期より扁平上皮化生の形態をとり免疫組織化学的にケラチン, アクチンの染色性の増加を認めた. 再生上皮基底部ではフィブロネクチンに続き, ラミニン, IV型コラーゲンの線状陽性部を認めた. 特に早期ではアクチンは基底側に出現し, その部分と対応して間質側のフィブロネクチンの出現を認めた. 電顕的に基底膜形成に先立つ上皮・間質間の初期の結合様式として fibronexus, anchoring filament の出現を認め, その後ヘミデスモゾーム, 基底板形成, さらに anchoring fibrils の出現を認めた. 線毛細胞, 粘液細胞はその後期に出現し, およそ2週で気管上皮は修復された.