抄録
巨大気腫性肺嚢胞切除後に, 肺癌が判明した60歳男性の症例を報告する. 約1年前に巨大気腫性肺嚢胞に感染を合併し, 巨大気腫性肺嚢胞切除術を施行した. その際切除病理標本より肺結核の合併が疑われ, 抗結核剤を投与していたが, 新たに径1.5×2cmの腫瘤影が嚢胞切除側の右上葉に出現し, 急速に増大した. 術中迅速標本で肺癌が疑われ, 右上葉切除を施行した. 病理組織学的には巨細胞型大細胞癌であり, pTNM分類はT2N0M0であった. 術後CDDP 120mg, VDS 4.5mg, MMC 12mgの投与を行ったが, 術後5ヵ月で死亡した. 巨大気腫性肺嚢胞の症例においては, 常に肺癌発生の可能性も考慮し, 注意深い経過観察が必要と考えられた.