抄録
症例は43歳の男性で血痰, 呼吸困難を主訴に来院. 胸部X線写真上, 両側肺野にエアー・ブロンコグラムを伴う浸潤影を認め, 同時にHb 5.0g/dlと著明な貧血を認めた. 浸潤影は自然経過にて10日後にはほとんど消失した. 腎機能障害も認められたため, 経皮的腎生検及び経気管支的肺生検を施行した. 腎組織は半月体形成性腎炎の所見であり, 直接蛍光抗体法にて腎糸球体基底膜にIgAの線状沈着が認められたが, IgGの沈着は認めなかった. 肺組織では軽度の胞隔の肥厚と肺胞腔に多数の担鉄マクロファージの出現をみた. 以上からIgA抗基底膜抗体による Goodpasture 症候群と診断した. プレドニゾロン投与により貧血は順調に改善したが, 経過中細菌性肺炎が原因と思われるDICを併発し死亡した. 診断確定後の全経過は約13ヵ月であった.