1991 年 29 巻 12 号 p. 1560-1568
気管支喘息患者の連続性ラ音を音響学的に解析し, その伝播特性について気管支狭窄による連続性ラ音と比較, 検討した. 気管支喘息患者の連続性ラ音はサウンドスペクトログラフの所見から monophonic tone と polyphonic tone の2つの pattern に分類できた. 前者は後者と比べて聴感上音量の左右差が明確であり気管支狭窄によるラ音との鑑別が困難であったが, コヒーレンス解析の結果から, 主として左右いずれかの肺内で発生して気管上頚部に極めてよく伝播していることが示唆された. また, polyphonic tone の場合は主たる音源が左右いずれの肺内にあるかを確定することは困難であったが, この場合も対側胸壁上よりも気管上頚部への伝播性の方が良い傾向が認められた. したがって, 気管支喘息患者の連続性ラ音の聴取部位として気管上頚部が非常に重要であることが確認された.