日本胸部疾患学会雑誌
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剖検肺からの Methicillin 耐性黄色ブドウ球菌検出例の臨床的背景と病理組織病変の検討
南部 静洋岩田 猛邦種田 和清郡 義明田口 善夫富井 啓介三野 真里市島 國雄小橋 陽一郎相原 雅典
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1991 年 29 巻 12 号 p. 1574-1581

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抄録

肺の微生物培養を施行した剖検569例中, (1986~1989年) Methicillin 耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) を検出した28例の臨床病理学的検討を行った. MRSA検出例は1986年: 2例, 1987年: 2例, 1988年: 6例, 1989年: 18例と著増を示した. 基礎疾患は悪性腫瘍が17例と多く, 悪性腫瘍以外では肝硬変症, 慢性下気道感染症等であった. 抗菌剤は24例に投与されていたが, 第III世代 Cephem 剤と Imipenem/cilastatin sodium が合計20例と多く, MRSAに対し感受性のある抗菌剤の治療は1例であった. 生前の喀痰培養は10例にのみ施行され, うちMRSA検出例は5例であった. MRSAの抗菌剤感受性では Fosfomycin や Ofloxacin に対し耐性株の増加がみられた. 組織学的な肺炎は19例にみられ, うち7例がMRSAが単独で検出された. 剖検例におけるMRSAの呼吸器感染症は悪性腫瘍の末期例で, 生前に同感染症の診断や治療が行われていなかった症例が多く, こうした状況が院内感染におけるMRSA著増の一因と考えられた.

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