1991 年 29 巻 12 号 p. 1614-1617
高CO2血症を呈した肺塞栓症の1例を経験した. 症例は向精神薬の大量服用による意識障害で入院した18歳の男性で, 低O2血症の持続と胸部X線写真で右上肺野の紋理減少を認めたことが, 肺塞栓症を診断する緒となった. しかしPaCO2の上昇を認めており, このことは肺塞栓症で通常認められる異常所見と一致せず, 診断を困難とした. 本症例における高CO2血症を呈した原因は, 肺塞栓症発症後も向精神薬による意識レベルの低下が持続しており, 呼吸数の著明な増加が見られなかったことから, 向精神薬大量服用による呼吸中枢の抑制と考えられた.