検診で胸部X線写真上の異常を指摘された65歳の男性が精査を目的に道北病院を受診した. 自覚症状はなく, 胸部X線写真では右上中肺野にわたる胸膜外徴候が陽性で右第5肋骨の骨融解像を伴う濃度が均一な陰影を認めた. また腹部画像診断で右副腎部に直径約5cmの腫瘤像を認め, 内分泌学的検査でノルエピネフリン, ドパミンの著明な増加を認めたため悪性褐色細胞腫とその肋骨転移を疑い, 腹部および胸壁の腫瘍切除術を施行した. 病理学的に両者共にクロモグラニン染色は陽性であったが, 腹部の腫瘤と副腎との間には連続性はなく悪性傍神経節腫と診断した. 本症例はカテコラミンが高値にも拘らず臨床的には全く無症状であり興味深く思われたため報告した.