1991 年 29 巻 12 号 p. 1624-1629
症例は56歳男性. 20年前から夜間の呼吸停止を指摘されていた. 10年前から高血圧症といわれ, 日中の眠気も認めていた. 平成元年1月, 早朝に繰り返される前胸部絞扼感と息苦しさのため当科に入院した. 終夜ポリソムノグラフィーでは apnea index 37.5回/時で中枢型優位の睡眠時無呼吸を認め, 睡眠時無呼吸症候群と診断した. また, 入院後第14病日の早朝に, 心電図上II, III, aVF誘導でST上昇を伴う胸痛発作が出現し, 異型狭心症と診断した. 4回行われた終夜ポリソムノグラフィー時には胸痛発作は認めなかった. しかし, 睡眠時無呼吸および異型狭心症発作がREM期に出現しやすく, ともに自律神経系の活動性の変化が関与することから両者における因果関係が推定された. また, 無呼吸による低酸素血症や呼吸再開時の過換気が, 異型狭心発作を誘発する可能性などが考えられた.