日本胸部疾患学会雑誌
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急性低酸素症における主要臓器の酸素摂取率および血流量の変化
浅野 浩一郎山口 佳寿博河合 章森 正明高杉 知明梅田 啓川城 丈夫横山 哲朗
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1992 年 30 巻 12 号 p. 2098-2104

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抄録

急性低酸素症における臓器レベルの代償機構を検討するため, 麻酔犬に室内気または13%酸素を吸入させ各種血行動態指標および動脈血, 混合静脈血, 頸, 冠, 肝, 腎静脈血の血液ガス諸量を測定した. これらの測定諸量を用いて室内気ならびに低濃度酸素吸入下における生体全体ならびに主要臓器の酸素利用・輸送に関する諸指標を解析した. 低濃度酸素吸入時には生体全体の酸素供給量が減少したが, 酸素摂取率の増加により酸素消費量は有意な変化を示さなかった. 臓器レベルでは低酸素吸入時に酸素摂取率が肝・門脈系臓器で室内気吸入時の1.5倍に, 腎臓で2倍に増加したが, 心臓, 脳では有意な変化を認めなかった. 一方低酸素吸入時の臓器血流量は肝・門脈系で34%減少したのに対し心臓, 脳では各々11%, 22%増加した. 腎血流量には有意な変化を認めなかった. 以上の結果より急性低酸素症時には肝・門脈系, 腎臓の腹部各臓器はその酸素摂取率を増加させることによって, 脳, 心臓は血流量の増加によって臓器レベルの好気性代謝を維持することが示唆された.

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