1992 年 30 巻 4 号 p. 658-661
65歳の男性で, 血痰と左前胸部痛を主訴に入院. 胸部X線写真にて左S8に結節状陰影を認めたため, 肺悪性腫瘍を疑い経気管支肺生検を施行するも, 悪性所見は得られなかった. しかし画像所見上, 悪性を否定できないため肺葉切除術を行った. 切除標本内には, スギの小枝が見られ, 周囲の肺組織は暗赤色調を呈していた. 組織学的には, スギの繊維を中心にして異物性肉芽腫が形成されていた. 本例は気管支・肺異物症としては極めて稀なものであるうえに, 術前の問診ではスギの枝刈りの既往や小枝誤嚥の自覚がなく, 内視鏡的可視範囲にも異常が認められなかったことから, 切除術後に確診が得られた. 以上より肺結節状病変の鑑別疾患のひとつとして, 異物性肉芽腫症も考慮すべきことが示唆された.