日本胸部疾患学会雑誌
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99mTc-DTPAエロソール吸入による肺上皮透過性の研究: 放射線治療における肺上皮透過性の推移
穴沢 予識井沢 豊春手島 建夫三木 誠本宮 雅吉
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1992 年 30 巻 5 号 p. 862-867

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抄録

DTPAは alveolar capillary membrane を透過し肺障害によりその透過性は亢進すると考えられるが, 私共は, 放射線治療を要した胸部悪性腫瘍患者10名において99mTc-DTPAを用いて経時的に肺上皮透過性の推移を調べた. 放射線肺臓炎の発症した症例では間質性陰影の出現時期に向かい肺上皮透過性は亢進していき, 陰影出現時に最も亢進し, その後ステロイド剤の投与による陰影の改善に伴ない肺上皮透過性は低下していった. この透過性の変動は照射野のみでなく陰影の出現していない同側肺野, 対側肺においても同様に見られた. また, 放射線肺臓炎の起こらなかった5例中2例においては放射線照射後両肺の肺上皮透過性の亢進が見られた. 放射線による肺上皮透過性の亢進は照射野または肺臓炎の陰影出現部位だけでなく両肺全体に起こっており, 肺障害が全肺野に起こっていることが推測された. この検査により放射線肺障害を早期に検出することが可能ではないかと示唆された.

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