日本胸部疾患学会雑誌
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自然気胸の水封ドレナージ中に発生し左右分離換気にて治療した再膨張性肺水腫の1例
小檜山 律島貫 公義山本 従道倉富 雄四郎村山 隆紀瀬尾 憲正
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1992 年 30 巻 5 号 p. 935-940

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抄録
症例は23歳, 男性. 右自然気胸完全虚脱例で発症11日目に水封ドレナージを施行したところ, その4時間後に再膨張性肺水腫 (REPE) を発生, PEEPを付加した人工換気にて治癒しえた. 本例の気道内浸出液中のTPは5.5g/dl (対血漿比0.89), 顆粒球エラスターゼは7,000μg/lとともに高値を示し, REPEの主因が活性化好中球を介した肺血管内皮細胞障害にもとづく透過性亢進型肺水腫である可能性が示唆された. 本例の人工換気時に左右分離換気を試みた. その結果, 重篤なREPEに対する左右分離換気を用いた患側肺へのPEEPの適用は, 縦隔偏位の発現に注意しつつ行えば, 有効な手段と考えられた. 本例では慎重な水封ドレナージにもかかわらず, 咳嗽刺激にて突然再膨張が加速されREPEの発生をみた. 本例のような長期間の完全虚脱肺の脱気時には, 水封といえども咳嗽を極力抑えることがREPEの予防に重要であると考えられた.
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