日本胸部疾患学会雑誌
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気管支拡張を伴ったα1-アンチトリプシン欠乏症の姉妹例
藤田 明加藤 邦彦清水 浩安端迫 清
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1992 年 30 巻 5 号 p. 952-958

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抄録

気管支拡張を伴ったα1-アンチトリプシン欠乏症の姉妹例を報告した. 姉 (発端者), 53歳. 40歳代に3回の肺炎の既往があり, 53歳の時から労作時呼吸困難が出現した.α1-アンチトリプシン値は11mg/dlで, 胸部X線写真では肺野血管影の軽度減少を認め, 気管支造影では気管支の嚢状拡張を認めた. 妹, 初診時年齢50歳. 49歳の時に肺炎, その後より咳嗽, 喀痰, 労作時呼吸困難が出現した.α1-アンチトリプシン値は22mg/dlで, 胸部X線写真では輪状陰影と tram line を認めた. 姉妹とも胸部CTでは, 嚢胞様変化と拡張した気管支, および両者の連続している像を広汎に認めた. 姉妹のα1-アンチトリプシンの表現型は Siiyama のホモ接合体であった. 家系調査では,α1-アンチトリプシンを測定し得た7例の値は中間値で, 全例とも無症状であった.α1-アンチトリプシン欠乏症は高率に肺気腫症を合併することが知られているが, 明らかな気管支拡張の合併は本邦では最初の報告である. 本姉妹例における気管支拡張とα1-アンチトリプシン欠乏の関連の可能性に関して, 若干の文献的考察を加えた.

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