1992 年 30 巻 6 号 p. 1175-1179
症例は84歳の女性. 背部痛で発症. 頚部のリンパ節腫大と, 胸部X線写真上両側肺野に多発する腫瘤様陰影を認めた. 経皮肺生検では壊死が強く, 特異的な所見が得られなかったが, 気管前のリンパ節生検にて diffuse large cell lymphoma と診断された. 脳梗塞による全身状態の悪化のため化学療法等の治療を行えなかったにもかかわらず, 左頚部のリンパ節および肺内の病変の大部分は自然に退縮した. 患者は後に, 汎発性腹膜炎のため死亡. 剖検では, 悪性リンパ腫の全身諸臓器への播種を認めた. 大部分の肺内の病変は瘢痕化していたが, 壊死組織の中に腫瘍細胞の残存が認められた. 小腸粘膜の腫瘍が壊死に陥り, 穿孔していた. 入院後の全経過は約6ヵ月であった. diffuse large cell lymphoma の自然退縮はまれであり, 若干の考察を加えて報告した.