日本胸部疾患学会雑誌
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術前化学療法が奏効した浸潤型胸腺腫の1例
酒井 聡冨田 良照田中 春仁中原 康治味元 宏道小久保 光治
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1992 年 30 巻 6 号 p. 1186-1191

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抄録

症例は38歳, 男性. 頸部顔面浮腫を主訴とし, 当院受診し, 胸部X線写真にて縦隔腫瘍を指摘された. 胸部CT, 胸部MRIにて, 上縦隔に上大静脈, 両側の腕頭静脈への浸潤を示す腫瘍を認めた. 静脈造影では左右腕頭静脈で閉塞していた. 経皮的針生検では胸腺腫の診断で, 正岡分類III期で, 全摘術は不可能と考えた. 術前化学療法としてCDDP, ADM, VCR, CPAの多剤併用療法を行い, 上大動脈症候群の消失と腫瘍の縮小を認めた. 入院時より白血球減少を認めたため, rhG-CSFを併用した. 腫瘍は左腕頭静脈に浸潤しており, 腫瘍全摘および, 左腕頭静脈再建を行った. 病理組織学的検査では, 全体に壊死と線維化が強く, 一部に胸腺腫の遺残を認めるのみであった. 術後に同様の化学療法と上縦隔に40Gyのコバルト照射を行った. CDDPを主体とした術前化学療法が奏効し, 全摘術が可能となった症例を報告する.

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