抄録
Immotile cilia syndrome (ICS) 15例の痰のレオロジカル及び生化学的分析を行い, びまん性汎細気管支炎 (DPB) 12例, 気管支拡張症 (BE) 11例の喀痰と比較検討した. ICSではDPBに比し, 有意に曳糸性が高く, アルブミン濃度が低く, フコース, シアル酸, IgAの濃度が高かった. 更にBEと比べると, 喀痰のレオロジカルな性状や生化学的成分の濃度には有意な差異は認められなかった. しかしICSではBEに比しシアル酸/アルブミン比が高値で, シアル酸/フコース比が低値であった. これらの成績はICSの喀痰がDPBやBEの喀痰に比し咳によるクリアランスに際し, 必ずしも有利な条件を有しているとはいえないことを示している. またICSでは分泌成分が絶対的, 相対的に多く, 逆に血管外漏出成分が少ないこと, したがって気道炎症及び気道上皮障害は軽度であることを示唆するものである.