抄録
浜松医科大学第2内科で1982年から1992年までに特発性間質性肺炎に施行した気管支肺胞洗浄 (BAL) 延べ118件中, BAL後の急性増悪が2件 (1.7%) 認められたことから検討を加えた. 症例1は54歳の女性, 症例2は75歳の男性で, いずれも発熱と呼吸困難の増悪を主訴として当科に入院した. BAL施行後, 呼吸困難が増悪し, 血液検査にてWBC, LDHの上昇, 胸部X線写真にてびまん性の網状影斑状影の拡大を認めた. 症例1はステロイド等の投与も無効で, 呼吸不全のため死亡したが, 症例2は抗生剤の投与のみで軽快した. BAL所見では2例とも好中球分画の増加が認められ (症例1: 6.5%, 症例2: 35.2%), 気道・肺感染症の存在が示唆された.2症例ともBAL直後に上肺野に浸潤影が出現した後に陰影が全肺野に進展したこと, 症例1の剖検で浸潤影に一致した部位にのみ巣状肺炎が認めたことから, 検査による細菌の散布が肺炎を招き, これが誘因となって急性増悪をきたしたと推察された.