抄録
症例は60歳の男性. 1987年に多発性神経鞘腫症と診断された. 1993年胸部異常陰影の精査のため当科入院となった. 胸部X線写真は左上下肺野に限局性の気胸と左S5, S8領域に円形の結節影がみられた. 陰影は胸膜の肥厚を伴い結節影へ向かう気管支, 血管の弧状陰影 (comet tail sign) がみられ, 円形無気肺と考えられた. 気胸の治療と結節影の確定診断を得るため気腫性嚢胞切除術, 肺部分切除術を施行し病理組織学的に円形無気肺と診断した. 自然気胸に合併した円形無気肺の報告は少なく, 本症例は非常に稀な症例で円形無気肺の成因を考える上で貴重な1例と思われた.