抄録
症例は27歳の男性で, 小学生時代から口腔粘膜のアフタ性潰瘍, 皮下の血栓性静脈炎, 座瘡様皮疹および外陰部潰瘍を繰り返していた. 平成2年9月に左大腿の深部静脈血栓症を合併し, 平成3年7月からは血痰を認めるようになった. 精査の結果, 左下肺動脈に動脈瘤が生じ, これが左B6気管支と fistula を形成し, 血痰をきたしていることが判明した. 肺動脈瘤と深部静脈血栓症の合併した病態は, Hughes-Stovin 症候群として知られているが, 本症例は不全型 Behçet 病の基準も満たしており, 本症例は, Hughes-Stovin 症候群の臨床像を呈した Behçet 病の1例としてとらえることができた. 治療に際しては, 患者により外科的切除術が拒否されたため, コルヒチンの投与を開始したが, 現時点では臨床所見の改善が認められている. このような Hughes-Stovin 症候群の臨床像を呈した Behçet 病は比較的稀な症例と考えられ, Hughes-Stovin 症候群と Behçet 病の関連性についても考えさせられた症例でもあったため, 文献的考察を加え報告した.