抄録
本研究は99mTc-ヒト血清アルブミン (99mTc-HSA) をマウスに吸入させ, その肺内残留率から肺クリアランス能を測定する薬物スクリーニング法の開発を目的とした. 装置及び条件は動物への吸入量が一定になるように配慮した. アクリルボックス内で10分間99mTc-HSAを吸入させ, その後, 経時的に肺を摘出して放射活性を測定し, 全吸入量に対する肺内残留率として評価した. その結果, 1, 3及び24時間後の肺内残留率は各々72.4±3.3, 60.1±2.3及び34.8±2.0% (平均値±SE) であり, この挙動は臨床における吸入肺シンチグラフィー法の肺クリアランスと同様であった. さらに, この肺クリアランスの挙動に対して2-コンパートメントモデル解析を適用することができた. 次に本法を用いて肺クリアランス系に対する薬物の作用について検討した. アドレナリンβ2受容体刺激薬である mabuterol は肺クリアランス能を亢進させた. 一方, 糖質コルチコイドの合成阻害薬である metyrapone は肺クリアランス能を低下させた. 以上の知見は,本法が肺クリアランス能を測定し得る簡便な薬効評価法として応用可能であることを示唆する.