日本胸部疾患学会雑誌
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31 巻, 6 号
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  • 甲斐 広文, 石橋 晃, 高浜 和夫, 坂田 喜代人, 磯浜 洋一郎, 中山 守雄, 杉井 篤, 宮田 健
    1993 年 31 巻 6 号 p. 679-685
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    本研究は99mTc-ヒト血清アルブミン (99mTc-HSA) をマウスに吸入させ, その肺内残留率から肺クリアランス能を測定する薬物スクリーニング法の開発を目的とした. 装置及び条件は動物への吸入量が一定になるように配慮した. アクリルボックス内で10分間99mTc-HSAを吸入させ, その後, 経時的に肺を摘出して放射活性を測定し, 全吸入量に対する肺内残留率として評価した. その結果, 1, 3及び24時間後の肺内残留率は各々72.4±3.3, 60.1±2.3及び34.8±2.0% (平均値±SE) であり, この挙動は臨床における吸入肺シンチグラフィー法の肺クリアランスと同様であった. さらに, この肺クリアランスの挙動に対して2-コンパートメントモデル解析を適用することができた. 次に本法を用いて肺クリアランス系に対する薬物の作用について検討した. アドレナリンβ2受容体刺激薬である mabuterol は肺クリアランス能を亢進させた. 一方, 糖質コルチコイドの合成阻害薬である metyrapone は肺クリアランス能を低下させた. 以上の知見は,本法が肺クリアランス能を測定し得る簡便な薬効評価法として応用可能であることを示唆する.
  • 関 純一, 川並 汪一, 米山 浩英, 原 文男
    1993 年 31 巻 6 号 p. 686-693
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    SDラットに生食水を溶かしたシリカを経気管的に注入し, 0.5時間から4ヵ月までの間経時的に屠殺し両肺を取り出した. 気管支肺胞洗浄 (BAL) と光顕-電顕観察を行い, BAL液中の炎症細胞の推移と, 肉芽腫形成過程を比較検討した. シリカ投与3時間からBAL液中には好中球の著明な浸潤があり, 4ヵ月間高値を維持した. マクロファージの回収量は急性期に少なく, 組織内での著明な浸潤とは明らかに矛盾した. これはマクロファージがその細胞膜に特殊接合装置を形成し肺胞固有の間質から遊離し難くなるためと考えられた. この接合装置の出現頻度は病巣の発達と共に増大した. 肉芽腫は傷害された肺胞壁を巻き込み再生上皮により境界された. 傷害を受けた肺胞毛細血管の内皮細胞は, 再生して有窓構造を示すこともあった. これは気管支血管内皮細胞の特徴であることから後者の内皮が吻合部を介して肺胞レベルへ遊走し再生した可能性を示唆するものと考えられる.
  • 工場労働者におけるアンケート調査より
    黒野 隆, 新島 眞文, 佐久間 哲也, 巽 浩一郎, 木村 弘, 国友 史雄, 巨田 康祐, 栗山 喬之
    1993 年 31 巻 6 号 p. 694-699
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    18歳から59歳までの男性約7,000名を対象とした疫学調査により, いびきの程度と, 年齢, 肥満, いびきの家族歴, 日中の傾眠, 高血圧, 喫煙, アルコール摂取, 交通事故との関連を検討した. 毎晩往復の大いびきをかく人, ないし毎晩大いびきで時に息が止まる人を重度のいびき群とした. 加齢, 肥満, 喫煙, アルコール摂取はすべていびきの増悪因子であることが認められた. また重度のいびき群では, いびきの家族歴があり, 日中の傾眠および高血圧の既往歴, もしくは治療中の人の割合が有意に多かった. 交通事故との関連は認められなかった. アンケートにて重度のいびき群の中で, 40歳以上で肥満を伴い, かつ日中の傾眠および起床時の頭痛があるというすべてに解答した被検者は全体の0.25%であった.
  • 山口 佳寿博, 浅野 浩一郎, 高杉 知明, 河合 章, 森 正明, 梅田 啓, 藤田 浩文, 鈴木 幸男, 川城 丈夫, 横山 哲朗
    1993 年 31 巻 6 号 p. 700-706
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    赤血球の抗酸化機構が正常肺の低酸素性肺血管攣縮反応 (HPV) の強度維持に関与するか否かを一定の流量 (70ml/min) で灌流した家兎摘出肺 (n=72) を用いて検討した. 吸入気を対照ガス (21%O2) から低酸素ガス (3%O2) に切り換えた場合の平均肺動脈圧の上昇 (ΔP) をもってHPVの指標とした. 赤血球のスーパーオキサイド・ジスムターゼ (SOD), 赤血球膜陰イオン・チャンネル, 赤血球のカタラーゼ (CAT), グルタチオン・ペルオキシダーゼを薬物にて阻害・不活性化した. 正常赤血球, 各処理赤血球を灌流液に加えΔPを測定した. 更にSODあるいはCATを直接灌流液に添加した前後でΔPを測定し以下の所見を得た. 1) 赤血球のスーパーオキサイド消去機構を阻害してもΔPは有意に変化しなかった. 2) 赤血球の過酸化水素消去機構の阻害もΔPに有意な影響を及ぼさなかった. 3) 灌流液にSOD, CATを添加してもΔPは有意に変化しなかった. 以上より正常肺におけるHPVは肺全体の抗酸化能力規定因子として重要な赤血球の抗酸化酵素活性とは無関係に発生することが判明した.
  • 塚越 秀男, 淀縄 聡, 黒沢 元博
    1993 年 31 巻 6 号 p. 707-711
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    総量3μg/kgのLTC4を静脈内に1時間持続注入すると, モルモット気道壁に浮腫が形成され, 1.8および3.6μg/kgヒスタミン静脈内投与に対する気道平滑筋の収縮率が増加した. TXA2合成阻害剤OKY-046の30および100mg/kg前投与はLTC4による気道壁の浮腫を抑制しなかったが, OKY-046 100mg/kg前投与はLTC4によるヒスタミンに対する気道過敏性亢進を抑制した. 従って, LTC4静脈内投与によるヒスタミンに対するモルモット気道過敏性亢進にTXA2が関与することが示唆された.
  • 市瀬 裕一, 鳥居 泰志, 米丸 亮, 内海 健太, 峯村 和成, 春日 郁馬, 外山 圭助, 石井 均, 西 功
    1993 年 31 巻 6 号 p. 712-716
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    演算処理が容易で, 侵襲の少ないアセチレン再呼吸法による肺血流量測定を熱希釈法による心拍出量と併せて呼吸器疾患例に実施し, 二法の成績を比較した. 呼吸機能正常の患者10名を比較対照とし, 肺気腫14名, 肺線維症7名を検討した. 心拍出量測定後, 患者はアセチレン, アルゴンを含む混合ガスを再呼吸した. 吸呼気濃度を質量分析計で測定した. 再呼吸中のO2, CO2交換による容積減少とガス平衡に至るまでの呼気終末ガス濃度の変動を考慮に入れ, 再呼吸バッグと肺が直列に連結した肺モデルを用いて解析した. 肺気腫9例, 肺線維症6例は心拍出量と肺血流量の関係において対照例の90%信頼区間内あるいは近傍になった. 肺気腫5例は心拍出量よりも肺血流量が少なく, 対照例の90%信頼区間を逸脱していた. 肺気腫例では本法では検出しえない血流の存在が認められ, これについて考察を加えた.
  • 谷崎 勝朗, 貴谷 光, 岡崎 守宏, 御舩 尚志, 光延 文裕, 宗田 良, 多田 慎也, 高橋 清, 木村 郁郎
    1993 年 31 巻 6 号 p. 717-724
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    気管支喘息40例を対象に, 副腎皮質ホルモン長期投与の気道炎症細胞に対する影響について検討を加えた. 1. 対象症例における副腎皮質ホルモンの1日投与量は, 投与期間が長くなるにつれて増加し, また, 血清コーチゾール値は, 投与期間が長くなるにつれて低下する傾向が見られた. 2. 気管支肺胞洗浄 (BAL) 液中リンパ球頻度は, 副腎皮質ホルモンの投与期間が長くなるにつれて減少する傾向を示し, 非投与例および投与期間4.9年以下の症例に比べ, 5年以上の投与例では有意に低い値であった, BAL液中リンパ球数も同様の傾向を示した. 3. 一方, 気道内好中球は, 副腎皮質ホルモンの投与が長くなるにつれて増加する傾向を示し, 投与期間10年以上の症例では, 非投与例および9.9年以下の投与例に比べ, 有意に高い増加を示した. BAL液中好中球数も, 出現頻度とほぼ同様の傾向を示した. これらの結果は, 副腎皮質ホルモンの長期投与により, 気道炎症細胞の交代現象, リンパ球の減少と好中球の増加, がひき起こされる可能性を示唆している.
  • 村山 史雄
    1993 年 31 巻 6 号 p. 725-732
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    接触時間, 即ち血液が肺胞気と接触する時間はガス交換の重要な要素であるが, 接触時間を実測した報告はほとんどない. 本研究では, 蛍光生体微小循環観察法で, ラット肺を観察し, 蛍光染色した赤血球を指標にして, 赤血球の肺毛細血管網通過時間を接触時間として実測した. 赤血球の肺胞との接触経路は非常に複雑であったため, 赤血球が通る肺細動静脈をその間の直線距離で分類, 単純化し, 接触時間を測定した. 分類された各系の平均接触時間は直線距離51~100μm: 0.3秒, 101~150μm: 0.4秒, 151~200μm: 0.5秒, 201~250μm: 0.7秒, 251~300μm: 0.7秒, 301~350μm: 0.7秒で, 0.1秒以下から1.2秒まで分布した. 全体の接触時間は直線距離で分類した肺細動静脈系における接触時間の頻度とその肺細動静脈系の頻度を乗じて算出し, 平均0.7±0.2秒 (mean±SD) であった.
  • 坂井 典孝, 玉置 淳, 千代谷 厚, 武山 廉, 金野 公郎
    1993 年 31 巻 6 号 p. 733-737
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    気道粘液線毛輸送系に対する二酸化イオウ (SO2) の効果と, 以上の作用における cyclic AMP の役割を明らかにする目的で, photoelectric 法を用い線毛運動周波数 (CBF) の反応性を検討した. 家兎気管上皮細胞のCBFは, SO2 (0.1~10ppm) 暴露により濃度依存性に低下し, 細胞内 cyclic AMP 濃度も減少した. サルブタモール, vasoactive intestinal peptide, プロスタグランディンE2, 3-isobutyl-1-methylxanthine はいずれもSO2によるCBFの低下を抑制し, cyclic AMP の減少も阻止した. よって, SO2暴露による気道線毛運動障害は内因性 cyclic AMP の減少に起因するものと考えられ, cyclic AMP 濃度を増加せしめる薬剤が予防的効果を有する可能性が示唆された.
  • 姚 香景, 藤川 晃成, 武田 善樹
    1993 年 31 巻 6 号 p. 738-743
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は32歳, 男性. 1990年2月咳嗽, 発熱が出現し, 間質性肺炎と診断され, 副腎皮質ホルモン投与を受けた. 症状軽快せず, 5月転院. 粟粒結核の診断にて抗結核治療を開始. 7月下旬よりふらつき, 複視が出現し, 8月頭部造影CT検査にて多発性結核性脳膿瘍を認めた. 12月胸部X線像は改善したが, 1991年1月左無気肺が出現. 気管支鏡検査で左主気管支入口部を閉塞する腫瘤を認めた. 2月突然大量吐血し死亡. 剖検にて縦隔の結核性リンパ節の乾酪壊死と隣接大動脈, 気管支及び食道に瘻形成がみられ, 胸部大動脈よりの出血死と診断された.
  • 峯下 昌道, 宮澤 輝臣, 土井 正男, 倉田 宝保, 古川 典子, 今村 展隆
    1993 年 31 巻 6 号 p. 744-748
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    c-erbB-2 癌遺伝子は分子量185,000の膜貫通性糖蛋白 (p185 neuあるいはHER-2とも称される) をコードしている. その機能はチロシンキナーゼ活性を持つとされており, 腫瘍細胞内では高い活性を示すと報告されている. さらにc-erbB-2癌遺伝子の増幅は乳癌, および肺癌における予後と密接に関連していると報告され注目されている. 我々は胸水貯留を認め急激な転帰をたどった悪性リンパ腫の1症例において悪性細胞にc-erbB-2, N-ras遺伝子産物およびCALLA (common acute lymphoblastic leukemia antigen) の表現を認めた. 悪性リンパ腫においてc-erbB-2遺伝子産物p185 c-neuの発現を報告した文献はなく貴重な症例と考えられた. 本症例は臨床上急速な進行を示したが,p185 c-neuは乳癌の予後不良因子であり, 悪性リンパ腫において p185 c-neuの発現が予後を予測する因子となり得るかどうか今後症例を蓄積し検討が必要と思われた.
  • 大石 秀人, 岡野 昌彦, 中野 豊, 植村 新, 佐藤 篤彦
    1993 年 31 巻 6 号 p. 749-753
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    気管支病変を伴った悪性リンパ腫の1例を経験した, 症例は35歳, 男性. 入院時胸部X線では両側肺門リンパ節腫大, 上縦隔の拡大を認め, CT, MRIでは病変は縦隔, 肺門の腫大リンパ節に連なって左右主気管支を取り巻いている所見であった. 67Gaシンチでは同部に集積を認めた. 気管支鏡では左主気管支は全周性に狭窄し, 気管支粘膜は発赤を伴っていたが滑らかであった. 同部より直視下に生検を施行し, 非ホジキンリンパ腫と診断. 表面マーカーはCD2, CD4, CD8が陽性, CD19, CD20が陰性でありT細胞性リンパ腫と考えた. 全身の検索にて他の部位への侵襲は認められず, stage IIと診断し, MACOP-B療法を施行し完全寛解を得た. その後41.4Gyの放射線治療を行い, 現在再発の徴候はなく経過観察中である. 本症例は比較的まれな気管支浸潤像をみた縦隔リンパ節原発悪性リンパ腫で, 本疾患の診断上, CT, MRIが有用であることを示す症例であると考える.
  • 中嶋 治彦, 瀬賀 弘行, 横田 樹也, 川島 崇, 丸山 倫夫, 佐藤 誠, 鈴木 栄一, 和田 光一, 来生 哲, 荒川 正昭
    1993 年 31 巻 6 号 p. 754-759
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    頭頸部の炎症を契機として縦隔炎, 膿胸にまで進展した稀な2症例を経験した. 症例1: 59歳女性. 扁桃炎に引き続いて頸部膿瘍が生じ, 1週間後に縦隔炎と膿胸に進展した. 症例2: 54歳男性. 抜歯2週間後に顎部蜂窩織炎を生じ, 更に2週間後, 縦隔炎と膿胸に進展した. 2例とも, ドレナージチューブによる頸部, 胸腔, 縦隔からの持続吸引, 排膿, 洗浄と抗生物質治療の結果, 約2ヵ月で寛解した. 症例1では, 耐糖能障害が認められ, これが頸部炎症から縦隔炎に進展させた増悪因子であったと考えられた.
  • 佐々木 文彦, 石崎 武志, 高橋 秀房, 飴島 慎吾, 中井 継彦, 宮保 進
    1993 年 31 巻 6 号 p. 760-765
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は64歳の男性. 29歳時に結核性胸膜炎に罹患し, 58歳より在宅酸素療法を行っていた. 62歳時, 安静時呼吸困難および間代性痙攣を主訴に入院. 2回にわたりCO2ナルコーシスを発症したため, 経鼻挿管による間歇的陽圧呼吸の後, 胸郭外陰圧式人工呼吸器による間歇的陰圧呼吸に移行した. 退院後, 夜間平均7時間の使用にて, 20ヵ月を経過しているが, 慢性呼吸不全の急性増悪はなく, 日中の活動性の改善が得られた. 肺疾患によるCO2蓄積を伴う慢性呼吸不全患者に対し, 胸郭外陰圧式人工呼吸による夜間在宅人工呼吸療法は有用であると考えられた.
  • 岩瀬 彰彦, 市川 弥生子, 鈴木 道明, 中村 直子, 青木 茂行, 松岡 緑郎, 永山 剛久, 河端 美則
    1993 年 31 巻 6 号 p. 766-770
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は52歳, 女性. 発熱, 湿性咳嗽を主訴に入院. 胸部X線写真で多発性の空洞影を呈し, ウェゲナー肉芽腫症を疑われた. しかし上気道, 腎病変を認めず, 抗好中球細胞質抗体 (ANCA) も陰性であった. 最終的に開胸肺生検を施行し, 限局型ウェゲナー肉芽腫症の診断が得られた. 近年, 本症の診断にANCAの有用性が多数報告されているが, 陰性の場合でも本症を否定はできず, 確診を得るには積極的に開胸肺生検を行う必要があると考えられた.
  • 桐生 拓司, 小林 英夫, 川口 真平, 叶 宗一郎, 上部 泰秀, 酒井 正雄, 松岡 健, 永田 直一
    1993 年 31 巻 6 号 p. 771-774
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は46歳女性で気管支喘息重積発作により緊急入院となった. 入院時全身チアノーゼを呈し, 動脈血ガス所見はpH7.163, PaO2 29.9Torr, PaCO2 81.3Torrであった. 人工呼吸管理を施行中に, 縦隔気腫, 皮下気腫に加え, 後腹膜気腫, 気腹を合併したが, 呼吸状態の改善にひきつづき, 20日後に消失した. 気管支喘息の後腹膜気腫もしくは気腹の合併例としては本邦第4例目である. 気腹の成立機序としてはCT上, 両側内胸動脈周囲にガス像が認められ, 横隔膜の胸骨及び肋骨起始部から成る胸肋三角すなわち Anterior Pathway を経由し, 縦隔より腹腔へ空気が移行したものと考えられた.
  • 小山 茂, 久保 恵嗣, 高林 康樹, 宮原 隆成, 川嶋 彰, 藤本 圭作, 本田 孝行, 松沢 幸範, 小林 俊夫, 関口 守衛
    1993 年 31 巻 6 号 p. 775-779
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は29歳男性, 禁煙後5年. 北アルプス縦走中に発症. 呼吸困難, 意識混濁となり緊急入院. 水泡性ラ音, 乾性ラ音を聴取し, 胸部X線写真では, 両肺野に斑状の浸潤影を認めた. 入院時の血液ガスは室内気吸入下で pH 7.452, PO2 35.5Torr, PCO2 31.6Torr であった. 肺循環動態は, Ppa 41/16 (27) mmHg, PCWP 6mmHg, CI 6.67l/min/m2 であった. 第3病日に右中葉枝より気管支肺胞洗浄を施行した. 細胞数2.05×105/ml (肺胞マクロファージ61.5%, 好中球25.5%, リンパ球13.0%) で, 洗浄液中の蛋白濃度の増加を認めた. また, 血中心房性ナトリウム利尿ペプチドの増加もみられた. ステロイドパルス療法により軽快したが, 寛解時にも低酸素換気応答能の低下が認められた. 本症の発症における肺胞マクロファ-ジと好中球の役割について今後の検討が必要とされる.
  • 松葉 篤治, 松元 幸一郎, 月田 慎樹, 桑野 和善, 山崎 裕, 安藤 恒二, 藤木 哲郎, 松葉 健一
    1993 年 31 巻 6 号 p. 780-784
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    原発性肺癌で胸部X線写真上ニボーを伴う透亮像の腺癌例は稀とされている. われわれは肺結核と誤診されたこのような症例を経験した. 症例は63歳の非喫煙女性. 胸部X線写真にて左下肺にニボーを伴う空洞様陰影を指摘され, 気管支鏡検査時の気道分泌物で抗酸菌陽性であった. 抗結核剤の投与にて軽快せず, 左下葉切部術が施行された. 肺癌例における空洞の形成機序を考える上でも興味深い症例と思われるので, 診断および画像所見を含めて若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 潤間 隆宏, 八木 毅典, 田辺 信宏, 長 晃平, 角坂 育英, 長尾 啓一, 廣島 健三, 栗山 喬之
    1993 年 31 巻 6 号 p. 785-789
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    39歳の男性. 労作時の息切れ, 動悸を主訴に近医受診. 胸部X線写真, 心電図, 心エコー検査にて心拡大と右室肥大を指摘される. 症状が進行性に増悪するため慢性肺血栓塞栓症を疑われ当科紹介となる. 肺血流シンチグラムでは左肺血流の完全欠損と右肺上葉の一部に血流欠損を認めた. 胸部造影CTにて, 肺動脈主幹部と左右肺動脈の内腔に腫瘤性病変を認め, DSAによる肺動脈造影では左肺動脈の完全閉塞と右肺動脈の著明な狭窄がみられた. さらに, MRIでは腫瘤性病変の壁外への浸潤が疑われ, 悪性腫瘍が考えられたが診断は確定できなかった. 入院後も右心不全は増悪し約2ヵ月後に死亡した. 剖検では肺動脈内腔より壁外性に浸潤する腫瘍がみられ病理診断は肺動脈原発肉腫であった.
  • 添田 哲也, 森 雅樹, 森田 祐二, 横川 和夫, 佐々木 拓子, 西山 薫, 浅川 三男
    1993 年 31 巻 6 号 p. 790-794
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は67歳, 女性. 咳嗽・喀痰を主訴に近医を受診した際に胸部単純X線写真で左下肺野に径15mm大の結節影を指摘され, 精査目的に当科入院となった. 陰影は辺縁明瞭で1年半の経過中大きさは不変であり, 良性肺腫瘍の可能性が最も高いと考えられた. 前医で施行した10mm厚CTで, 結節影の近傍に単純像では指摘出来ない小さな濃度上昇域を認めた. この微小陰影の性状をより詳細に検討するため, 当科入院後に高分解能CT (1.5mm厚) を施行した. このCTでは, 陰影は4mm大で辺縁は不明瞭であり濃度は比較的低く, 静脈の関与を否定できないなど悪性肺病変の可能性を示唆する所見が得られたため開胸術を施行した. 病理学的には単純像で指摘された病変は肺過誤腫, CTで新たに発見された病変は肺腺癌と診断された. 高分解能CTは, 肺野末梢微小陰影の質的診断に必須の検査法の一つと考えられた.
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