1993 年 31 巻 6 号 p. 780-784
原発性肺癌で胸部X線写真上ニボーを伴う透亮像の腺癌例は稀とされている. われわれは肺結核と誤診されたこのような症例を経験した. 症例は63歳の非喫煙女性. 胸部X線写真にて左下肺にニボーを伴う空洞様陰影を指摘され, 気管支鏡検査時の気道分泌物で抗酸菌陽性であった. 抗結核剤の投与にて軽快せず, 左下葉切部術が施行された. 肺癌例における空洞の形成機序を考える上でも興味深い症例と思われるので, 診断および画像所見を含めて若干の文献的考察を加えて報告した.