石綿曝露による肺線維症と悪性腫瘍, 特に肺癌, 悪性中皮腫の発症との関連性が注目されているが, 今回我々は炎症・線維化作用, 抗腫瘍活性があると考えられているマクロファージから産生される tumor necrosis factor α(TNFα) に注目し, 石綿曝露者の肺胞マクロファージから産生されるTNFαと気管支肺胞洗浄液中TNFαとを検討した. 石綿曝露者の肺胞マクロファージ tumor necrosis factorα産生能 (3,686±1,606pg/ml) は健常群 (1,838±753pg/ml) より有意に増加していた (p<0.01). BALF中TNFαも石綿曝露群で健常群と比べ有意に増加していた (p<0.05). TNFα産生能の増加は曝露開始からの期間と有意の負の相関関係が認められた (r=0.6, p<0.05). これらの結果から石綿曝露による肺局所のマクロファージからのTNFα産生の異常が石綿肺病態や石綿合併肺癌の発症に何らかの影響をおよぼしている可能性が推測された.