日本胸部疾患学会雑誌
Online ISSN : 1883-471X
Print ISSN : 0301-1542
ISSN-L : 0301-1542
大久野島毒ガス傷害者における慢性閉塞性肺疾患の経過
井原 義尚
著者情報
ジャーナル フリー

1994 年 32 巻 3 号 p. 216-224

詳細
抄録
慢性気管支炎等の慢性閉塞性肺疾患を有する毒ガス傷害者のうち72例について, 胸部X線像, 肺機能検査所見, 喀痰性状を解析し, 病像の経時的変化の検討を行った. 胸部X線所見別にみると, 炎症性変化群に比べ, 気腫性変化群において, また慢性気管支炎の臨床分類別にみると, 単純型, 感染型に比べ, 閉塞型, 感染閉塞型において, FEV1.0は有意に減少した. 次に72例を含め計93例について, 肺野CT所見の検討を行った. 肺野CT%(1-E) 値は, 胸部X線上, 正常群, 炎症性変化群に比し, 気腫性変化群において有意に低下し, FEV1.0, FEV1.0%, V50/V25との間に正の相関を認めた. 従来, 毒ガス傷害による慢性気管支炎の特徴は, 炎症の優位性と病像の多彩さにあるとされてきたが, 今回の結果から, 長期生存例における増悪群の特徴は, 気腫性変化に伴う閉塞性換気障害の進行にあると考えられた.
著者関連情報
© 日本呼吸器学会
前の記事 次の記事
feedback
Top